会議三日目
会議三日目の5月17日。気候はますます涼しくなる。
やはり9時から口頭講演がホテルの会議室で始まる。講演といってもビデオを流すだけのものもある。この日の講演も興味深いものが多かった。どんどん考えさせらるものがあるが、だんだん諦めるべきだと思い知らされもする。特に財政と保険に付いて各国の救助組織のメンバー間で熱い議論が交わされていた。こうした議論に加わるほどの英語力がないのも事実だが、議論に加われるような救助組織の実態や実績がないのも事実である。
14時に講演が終わり1時間の休憩となるが、昼食は取らずに本当に休憩してしまった。15時からデモンストレーションがバラドラ洞窟の前で始まると言うので行くが、15分ほど準備が遅れていた。
入口前の高さ30mあまりの岩壁を利用したレスキューデモでハンガリーとルーマニアの混成チームで行われた。担架は旧型のTSA担架を使用していた。新型のPetzlの担架は高価だという話をあちこちで聞いた。
デモでは最初に15mほどカウンターウェイトシステムで真上に引き上げ、その後、斜めに移動し、また10mほど上がった場所からチロリアンブリッジで地上まで降ろすというもので20分ほどで終わった。かなりてきぱきとこなしていた。
そのあとはルーマニアの担架のデモ。Petzlの担架に似ているが、よりコンパクトに収納できるものである。
次はハンガリーの洞窟救助隊のメディカルキットの展示であった。酸素吸入マスク、血液中の酸素量の測定器、AED、点滴用の針と機材と薬液、沿え木、人工呼吸の補助具などさまざまなものが数個のタックルバッグに収まっていた。多分モルヒネもあったに違いない。
その次はボルトのプレゼン。さまざまなタイプのボルトの利点と欠点を示しながらの説明である。見たことの無いタイプのものもあった。ちなみに海の傍で使うなら、ステンレスでも耐えられないのでロシア製のチタンが良いだろうとも。そんなもの何処で手に入るんだと思ったが、どこかにあるのだろう。昔、日本に来たロシア人ケイバー達はチタン製の竪穴装備を持っていたので、ロシアでは簡単に手に入るものなのかもしれない。
そのあとはパワーツールと言うことで18V-36Vのバッテリハンマードリル5台ほどでの実習・実演だった。中でも、ねじ込み式のボルトがなかなか興味深かった。あけた穴に、ねじ自身で溝を掘ってとめるというもののようで、ヒルティから発売されている。
アイススクリューを小さくしたような構造で、岩を削りながら締めこんでいくようであるが、なんだか信用できない。テストなしには使いたくないなあ。
SSFからデータが出てくれば信用できるけれども。
そのあとは、ハイフォンやニコララジオと同タイプの新型洞窟用通信機の実演。この手の通信機はやはり欲しい。
過去に岐阜であった洞窟事故の際に、この手の通信機があれば救助にかかった時間を大幅に短縮できただろう。
最後に、スロヴァキアのケイビングギアメーカーであるメアンダー社のグスタフ社長による新型脱出用システムの紹介。5.5mm30mのケブラ-ロープを使いとてもコンパクトにまとまっている。しかし5回ぐらいの使用にしか耐えず、ロープは基本的には使い捨てのようだ。木にひっかかったパラグライダーからの脱出用には良いが、ケイビングで何に使うのかというとはなはだ疑問である。果たしてオンロープでサブロープとして使用できるのだろうか。できれば便利だろうが耐衝撃性能が懸念されるところだ。
そしてすべてが終わった6時過ぎにハンガリーで最も長いバラドラ洞窟に入った。この洞窟はいくつかの入口が観光洞にもなっているし、隣国のスロヴァキアにも通じている。写真を撮りつつ遅れないように皆に付いていく。なにしろ、私にとっては今回のアグテレク国立公園で入ることのできる唯一の洞窟だからだ。 しばらく行くとコンサートホールに出る。 5人のメンバーによる演奏でアンコールも2回ありなかなか盛況であった。ここで45分ほ音楽を聞いた後、外に出るが、やはり写真を撮りながらなのでずいぶんゆっくりしてしまった。もっとも同じことを考える人も10人ぐらいはいた。コンサートホールまでの、水路沿いの通路と異なり、一段上の二次生成物の豊富な大きな空間であった。
19半頃からさよならパーティである。やはり屋外で開催されているが、ホテルのケータリングサービスがあり、暖かな食べのものもサーブされていた。ファーストドリンクは近隣のトカイ地方のトカイワイン。初めて飲んだが、いわゆる貴腐ワインで甘く不思議なワインだ。
ひとしきり、ハンガリーのおいしい品々を食べた後は、談笑の時間である。とはいえ言葉が不自由な私にはいろいろ問題がある。まあそれでもいくらかの人とは話をした。 日本に興味を持っている人とか、行く予定がと言う人は結構いたりする。日本は経済的に大きなマーケットでもあるし、先進技術もあるお国がらなのでビジネスや留学でという人が多いようだ。もっともほとんどの人は日本に行っても、忙しくて何処にも行く暇が無いとも言う。実際、私の所属クラブにも良く、仕事で日本に来ている人がケイビングしたいとやってくるのだが、結局仕事が忙しくて、ほとんど穴に行けないままに帰国してしまっている。旅行で短期間来る人の方が楽しんで帰れるぐらいだ。
パーティの途中で、ハンガリーやその周辺諸国の洞窟写真の3次元スライドショーを見たりしながら過ごしていたが、疲れと寒さに耐えきれず23時ごろには退散した。ホテルの部屋からは24時過ぎまで歓声が聞こえていたが、その声がやむ前に就寝してしまったのでいつまでやっていたのかは良く判らない。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント