危険なケイビングとヘルメットの正しい装着法
久しぶりの書き込みになってしまったけれど、最近気づいたことが一つあるので書いておかねばと思う。
ケイビングにおいてはヘルメットは必須とされる装備である。しかし、単にヘルメットをかぶれば良いわけではない。
大まかに言って、工事現場で使用される作業用ヘルメット。通称ドカヘルとクライミングで使われるクライミングヘルメット、オートバイで使われる二輪車用ヘルメット、他にもカヌーやサイクリング、スキーで使うヘルメットなど多種多彩なヘルメットが販売されている。
ケイビングで使われるヘルメットはこれらのうち、クライミング用として販売されているものだ。横穴で立って歩けるような場所しか行かないという限定的な条件下であれば、作業用ヘルメットでも用が足りる場合もあるけれど、基本はクライミングヘルメットを使用するべきである。
そしてクライミングヘルメットであるが、単に頭に乗せればよいというものではなく、きちんと購入時に添付されている使用説明書を読んで使用するものである。間違っても、あご紐を止めずに使用したり、止めてもあご紐のストラップを最大限伸ばして、ゆるゆるで使用しても良いとは書かれていない。緩みがないようきちんと締めるのが基本で、ストラップが締まるのが気になるようであれば、少しだけ緩めても良い。しかし、これ以上伸びないところまで伸ばしても良いとは書いてはいない。
ということを書かねばならないのは、最近になって録画してあった正月番組で信じられないものを見たせいである。
出演者の滝川クリステルさんというタレントがストラップを最大限伸ばした状態でケイビングをしていた。転倒時など怪我をしやすい危険なケイビングだ。何故その様なことになったのか。タレントさんやTV撮影スタッフをガイドし安全管理を行うべき立場であろう、2011年頃に設立されたケイビングツアーの業界団体の代表者が、TV画面の中でゆるゆるであったり、さらにはストラップを止めないままケイビングをしているという姿が堂々と映っていた。指導すべき人がそのような姿をしていれば、タレントさんが真似てしまうのは仕方がない。
この団体はケイビングを案内するケイビング専門ガイドを養成しているとのことである。しかし番組内で「世界的に知られる洞窟探検の第一人者」と紹介されれる代表者が、基本とも言える誤ったヘルメットの被り方をして、皆に推奨しているかのような姿を全国に放映しているとなれば注意喚起をしておかねばなるまい。
TV出演も多いし洞窟探検歴もたくさんある彼にあこがれて、ケイビングを始めようとした人や、彼からケイビングガイドになるための講習を受けた人が真似をしたらどうするのだろう。
一般人はシートベルトを締めないと危険だがF1ドライバーは運転が上手だから一般道でシートベルトを締めなくても大丈夫とか、レースでなくサーキットを適当に流しているだけなら締めなくても大丈夫とか、そういったものに準じる話のようでもある。本人は事故を起こさずとも外来的要因による事故は起きるのだから、締めなくともよい話にはならない。ケイビングでも自らは転んだりしなくとも自然落石あるいは人為的な落石を受けたりと外来的要因による事故は起きている。自然落石による事故は極めて少ないけれど他人の引き起こした事象による怪我は時々ある。
ヘルメットのストラップを止める云々は法律で決められた話でないので、やや事情は異なるとはいえ、皆のお手本になるべき人が、自分は上手だから大丈夫と基本を守らない、安全に配慮しない危険なケイビングを広めるようなことをするのはいかがなものかと思う。確かに、一部で言われているような、一部の研究者やケイバーが危険なケイビングをしていると言う話の実例はあるようで、そしてそれをTVで見るとは思わなかった。
世界的に知られる洞窟探検の第一人者と紹介される人が、ヘルメットも正しくかぶれないままケイビングしている姿を見たら、他のフリークライミングなどヘルメットを必要とするアウトドアスポーツの愛好者がどう思うだろう。第一人者がこれではケイビングをする人は皆、適当な危険な活動をしていると思われても仕方がない。
ということで、ほとんどのケイバーは正しくヘルメットをかぶってケイビングをしていますと、声を大にして言っておきたい。ごく一部の安全に配慮しない。手抜きをする人はそうではないかもしれませんが、こうした人はどんなスポーツにおいても一定数存在します。まあ、そうした人が第一人者となっている例はほとんどないと信じたい。ケイビングはそのほとんどない例に該当してしまいそうなのが悲しい。
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