日本最深の穴
先日、日本最深の穴・・・といっても入洞可能な最深の穴に入ってきた。日本でもっとも深い深さ300mを超える竪穴群は入洞許可が下りないため入ることができない。そうした深さの竪穴に入るには海外にケイビングに行くしかない状況なのは、寂しい限りである。
さて、朝に家を出発し、飛行機にて現地入りしたので洞窟の近くに到着したのは14時過ぎであった。そそくさと着替えて洞窟へ向かうも、洞口が判らない。
この日は地元の大学生5人と関東からの社会人5人で活動することになっており、早朝の飛行機で出発した2人と、大学生4人とで私たちよりも先行して洞窟に入っていた。時間差は2-3時間というところだ。また10人と人数が多いので最深の穴の近くにある100m弱の竪穴にも行くことにしており、先行6人はさらに3人ずつに別れていた。
後発組は迎えに来てくれた学生さんが100m弱の穴に、残りが最深の穴に向かった。そして、関東社会人だけの私たちは迷った。さすがに10年以上前の記憶は当てにならない。それなりの斜面を上下左右に1時間半も歩き回っても探し出せず、途方にくれかけていた時に、助けの呼び声があった。100m弱の穴に行っていた人達が、そちらの穴を出洞し、最深の穴に来たということだ。
そんなわけで、入洞は16時ごろとなる。その後、12m、-23m、-53mの竪穴を順調に降りて行き、150mほどまで1時間ほどで降下する。その先はフリーで下りていくのだが、ルートを見失う。フリーでなければ下りれる箇所はあったが、良いアンカーも無かったし、何よりフリーで下りれるのだからと、他を探す。それらしいところがあったが、やはりフリーではかなり怖いのでロープを使って20m下りてみたら、行き詰っていた。仕方がないので登り返すと、灯台下暗し。降り口のすぐ脇の岩の隙間が正解であった。
しかし、そこもフリーで降りるには降りれたが、降りるというより、滑り落ちたに近く、登り返しが大変そうだったので、後続の人にロープをかけてもらった。もっとも良いナチュラルが無くて、登り返しが大変なことには変わりないが、転落することはなくなったという程度のものだ。思い出して見れば10年以上前、同じ合宿中の別の班の出洞が遅いので見に行ったところ、この場所で落ちて捻挫だか打撲して、出洞がものすごく遅れていたということがあった。このあたりは、きちんとリギングしておいた方が、結果的には早いし楽になりそうだ。
この先、3つに分かれたクラックを、20mほど降りると狭い洞窟の入口に出る。到着したのは18時頃だろうか。ここからまた20mほど潜ると最深部となるのだが、ここから先は泥の海である。
私は最深部に行ったことがあり、その際に二度と入るものかと思っていたので、ここで待機した。その間、他の人は最深部に向かったが、狭さにくじけた人が一人、狭くては入れなかった人が2人と出て、最深部に入った人は10人中6人であった。私は待ち時間の間、最奥部と呼ばれる、別の空間への通路を探検していたのだが、こちらもきつめのフリーが続き、あと一息で最奥部への竪穴というところの手前のフリーを、一人で登る勇気がなく撤退した。最奥に行かないことになっていたので、無理をしても意味が無い。最近一人で行動中は無理ができない体になっている。
探検を終えしばらく待っていると最深部に行った連中が戻って来た。最初に戻ってきたのは19時40分、最後は21時過ぎと非常に時間がかかっている。泥だらけで滑りやすく足場の無い傾斜45度の斜面を登らなければならぬなど、時間がかかるようだ。酷い場所では、泥の壁に指や足を突き刺し、泥の中にある岩の突起のホールドを探さなければ登れなかった記憶がある。またこの泥の支洞の出口も大変狭く、入れない人が2人、出るのに40分近くかかる人などとかなり苦しいようだ。ちなみにほぼ全員だと思うが、二度と来るものかという感想だったように思う。誰でもそう思う場所なんだろう。ここに何度も来たいという奇特な人はいるのだろうか。
私自身は8番手、21時頃に登り返し始め、-53mの竪穴部の底には21時半頃に到着した。そこには私より1時間ほど早く登り返し始めた人など3人ほどがまだ待機していた。時間と共に一人二人と登っていくが、なかなか後続の3人がやってこない。
しかし、第4ピッチなどのロープを撤収した人が来るまで待機は解消せず、後続がやってくる。もうここまで来たからと、後から来た人を先に行かせる。さすがに5-6人が53mを登るのを待っていると体が冷えてくる。震え始めた23時頃に登りだし-53mのロープを撤収した。数年ぶり、いやそれ以上ぶりの撤収作業のような気がする。近年なかなか撤収の機会に恵まれていない。
そして竪穴を登りきると、事前の打ち合わせでは誰もピッチヘッドには待っていないはずだったのに、なぜか4人もいる。なぜかというと、どうも2時間以上粘っても第2ピッチと第3ピッチの間の狭いクラックを登り返せない人がいたからだ。あぶみをかけたり、人が足場になったり、ハーネスを外したりといろいろ苦労していたようだが、最後はロープを使って登ろうとしたようだったが、その際にチェストアセンダーを使ってしまったらしく、上にも下にも動けず、スタックしていた。
もうそうなったら、ロープを切る以外に脱出できないので、上で待機している人に切ってもらい、一度降りてもらう。その後、私が上に先に上がり、アブミごと引き上げて脱出させた。その他にも荷揚げ作業などもあり、私が登り終えてからさらに1時間ほど経っていたような気がする。
降りるときは重力に任せて降りれるが、逆はかなり辛いということを忘れてはならないということだ。今回は、私にとっては狭い場所ではなかったので、他の人のことまで気が回らなかったのは失敗だった。
そんなこんなで2時ごろに出洞したが、第2、第1ピッチの撤収をしてくる人がでてこない。やはり1-3時間近く詰まったりすると、著しく体力を消耗してなかなか登って来れないのかもしれないなあなどと思いつつ、車の近くで横になってうつらうつらとしていたら、3時半頃に出洞してきた。
この翌日は、ケイビング集会でレスキュー講習の講師をすることになっていたので、翌日かなり疲れたが、この話はまた次回。
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